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ドイツ時計 実機でインプレッション【2回】

910.SRSのイメージ

 
 

徹底的にモディファイされた
コレクション唯一の
新作フライバッククロノグラフ


 2回目の今回は、質実剛健の4文字熟語がピッタリなジンにしては、ちょっと趣が違い柔らかな印象の新作、910.SRSを取り上げたい。
 
 その印象は、アイボリーがかった文字盤からくるところが大きい。黒文字盤がコレクションの大半を占めるジンゆえに、よけいそう感じるのかもしれない。もちろんスペックたるや、ジンらしく決して柔らかではないのだが…(笑)。実はこの文字盤。2016年のジン社創業55年記念モデルとして300本限定リリースされた、スプリットセコンドクロノグラフ(910.JUB)のデザインを受け継いだものなのである。
 
 さて、このモデルで特徴的なのは、そんな全体の雰囲気もさることながら単なるクロノグラフではなくフライバック機構を備えたクロノグラフだというところ。実は、フライバック機能を搭載したモデルは、現在この910.SRSのみ。クロノグラフ機を数多くラインナップするジンにあって、これには僕自身もちょっと意外だった(かつては6000シリーズや103シリーズにあったようだが現在はディスコン)。ちなみにモデル名の「SRS」は、このフライバックの動作を示す“Stop Retour-Start(スタート、リセット、スタートの意)”の頭文字をとったものだという。
 
 そして、最も特筆すべきはそのフライバック機構を加えたムーヴメントだろう。ベースムーヴメントはETA社のCal.7750なのだが、これにフライバック機構の要となる強固なフライバックレバーを追加したばかりか、クロノグラフの制御方法を通常のカム式からわざわざコラムホイール式に変更するなど、かなり大掛かりなモディファイが施されている。
 
 このコラムホイール、いまや自社製クロノグラフムーヴメントの多くが採用しているように、精密な制御が行えるため操作性が高い。しかし同時に、複雑で生産コストも高い。当然、カム式を改良してまであえてコラムホイールにこだわったのはなぜなんだろう、という疑問がわいてくる。ということでそれについてジンの正規輸入代理店、ホッタの広報・加藤氏に聞いてみた。
 
「この910.SRSは創業55年記念で限定リリースした910.JUBをフライバックに変更し、限定ではなくレギュラーモデルとして今回ラインナップに加わりました。ベースとなった910.JUBでは、記念モデルにふさわしい高性能機とするために、たとえ手間がかかろうとも1900年代半ばまでの優れたクロノグラフムーヴメントで使われてきた伝統的な制御機構であるコラムホイール式をあえて採用、その魅力を備えた付加価値の高いクロノグラフとして完成させました。そして、この910.SRSにもそのまま受け継がれたというわけです」
 
 価格は72万3600円(革ベルト/カウレザー)〜79万9200円(ブレスレット)と70万円台。これだけの複雑な改良を加えながら、70万円台というのもなかなか魅力的なのではないか。
 

910.SRSのムーヴメント
ETA7750改のクロノグラフムーヴメントはコラムホイール(写真の上のほうにあるブルーのパーツ)に変更されただけでなく、片方巻き上げ式のローターも両巻き上げ式に変更が加えられており、巻き上げ効率もアップしている
910.SRSの文字盤
文字盤外周に2重に設けられたにタキメーター。外側で時速30〜59km。内側で時速60〜500kmまでの速度が計測可能。ちょっとわかりづらいが、12時と6時位置のインダイアル外周にはメタルリングを施し、洗練度を高めた

 

910.SRSの着用
ケース径41.5mmとサイズ的にはすごい大きいというわけではないが、ケース厚は15.5mmと厚め。そのため実際に手首に着けたときのズッシリ感は、ブレスタイプだったせいもあるのだろうが強く感じた
910.SRSのブレス
ブレスレットは観音開き仕様でしっかりとした作り。5連タイプのコマは両サイドと真ん中がポリッシュ、それ以外がサテンと2種類の仕上げが施されている。革ベルト仕様は通常のカウレザーとホースレザーの2種類がラインナップ

 

INFORMATION


ブランド名 Sinn/ジン
モデル名 910.SRS
ケース素材 ステンレススチール
ベルト素材 ステンレススチール
サイズ 41.5㎜
防水性 10気圧防水
ムーヴメント 自動巻き(Cal.ETA7750ベース、毎時28,800振動)/約40時間パワーリザーブ
税込み価格 79万9200円
問い合わせ ホッタ TEL.03-6226-4715
sinn-japan.jp
910.SRSの正面

 

 

菊地 吉正

菊地 吉正 – KIKUCHI Yoshimasa

 
時計専門誌「パワーウオッチ」を筆頭に「ロービート」、「タイムギア」、近年では女性向けウオッチマガジン「ワッタイム」と、時計関連の雑誌を次々に生み出す。また、アンティークウオッチのテイストを再現した自身の時計ブランド「OUTLINE(アウトライン)」のプロデューサーとしてオリジナル時計の企画・監修も手がける。GERMAN WATCH.jp編集長。

2018.07.06 UPDATE

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