ドイツ時計 実機でインプレッション【4回】
この手作り感がニンクリッツ最大の
魅力でありほかにない味だ
今回は、前から気になっていたトーマス・ニンクリッツを取り上げる。
このブランドは、時計修復のエキスパートとして、アンティークウオッチから置き時計、さらには町の時計塔の復旧まで手掛けてきた時計師トーマス・ニンクリッツがライフワークの一端としてスタートした。そのため、そのどれもがハンドメイド。そして古典的で、かつとても味わい深い。
そして最大のウリはムーヴメント。ETA社の手巻きムーヴメントであるユニタス6498-1をベースに、19世紀の懐中時計のようなグラスヒュッテ様式を取り入れた仕様に手作業でチューンナップされている。時計修復のエキスパートらしい様々な改良がふんだんに盛り込まれていて、まさに手作り感満載なのである。
今回インプレッションさせていただいたこのヴァイスヴァーサは、同ブランドのなかでも特にユニークな仕様で実におもしろい。その最大の理由はムーヴメントの表裏を逆にセットしている点にある。上の写真を見ていただきたい。文字盤として見えている部分は、実のところ一般的な時計においてはスケルトン仕様になった裏ブタ側から見られるムーヴメントのプレートとテンプ周りということになる。
つまり、普段なら時計を外して裏返しにしないと見られないはずの、ムーヴメントに施されたグラスヒュッテ様式の4分の3プレートや青焼きネジ留めのゴールドシャトン、スワンネンック緩急針、そしてテンプの動きまでもが装着しながら常に見られるというものだ。文字盤の一部分をスケルトン化してテンプの動きだけを見せる仕様とは比べ物にならないほど大胆かつユニークな仕様なのである。
しかしその反面、見た目にはかなり個性的に映ることも確か。ただ、時計単体で見るのと実際に着けてみるのとでは意外にもちょっと見え方が違った。もしかすると普段シースルーバックから見慣れている光景だからかもしれないのだが、個性的な外見も、着けてみると強く気にするほどの違和感はそれほど感じられない気がする。
個性的な仕様とはいえあくまでもベースは古典。ちょっとファッションに個性をプラスしたい人にはおもしろい時計なのではないだろうか。そして何と言っても、見る人の視線を釘付けにすることは確実。きっと自然と会話も弾むに違いない。
(写真◎笠井修)
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