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ドイツ時計 実機でインプレッション【5回】

ヨハンのイメージ

 
 

まさに大人にこそ似合う、
上品で落ち着いた佇まい


 今回は、独立時計師創作家協会(AHCI、通称アカデミー)の正式メンバーでもあるマルコ・ラング氏のブランド、ラング&ハイネのコレクションのなかから、代表作であるヨハンを取り上げたい。
 
 ちなみにラング&ハイネというブランドについては、同WEBサイト内に「独立時計師“マルコ・ラング” のウオッチメイキング」と題して、3回にわたって同氏の時計づくりへのこだわりについて書かせていただいているので、そちらもぜひ参照していただきたい。
 
 さてこのヨハンだが、フリードリヒ・アウグストⅠ世というコレクションとともに2002年にバーゼルワールドで発表されたラング&ハイネ初コレクションである。ちょっと話はそれるが、ラング&ハイネのコレクション名には、このようにザクセンのかつての王や侯爵の名前が付けられている。これも19世紀のザクセン時計芸術をウオッチメイキングに据えるマルコ・ラング氏のこだわりのひとつなのである。
 
 ヨハンとは、1854年からザクセン王となった人物の名である。気品高く思慮深いと言われる人柄を、シャープなスペード針とローマンインデックスで表現したという。そして文字盤にはホワイトエナメル(写真下)が施された。ちなみにそのエナメルダイアルは、2012年からユリス・ナルダンの傘下となったスイスのドンツェ・カドラン(Donze Cadrans)で製作されたもの。ドンツェ・カドランは、パテック フィリップやブレゲなどにも供給するほどの実力を持ち、年間1500枚ほどしか製作することができないと言われるぐらい高い品質を誇る。ラング&ハイネのエナメルダイアルはすべてこのドンツェ・カドランで作られているのだ。
 
ヨハンのエナメル文字盤

 
 搭載するムーヴメントは手巻きのキャリバーⅠ。その数字からもわかるが1番最初に作られたもので、ある意味では現在8種類あるムーヴメントの根幹をなす存在と言えるだろう。このキャリバーⅠについては、「最大の魅力はムーヴメントの美しい仕上げにあり」という記事に詳しく書かせていただいているので、興味のある方はそちらを読んでいただきたい。
 
 さて、今回実機を実際に手にしてみて、とにかく仕上げの美しさが際立っているとあらためて感じた。針も自製しているため、その美しさは圧巻。この繊細さは手づくりだからこそ為せる技にほかならない。極細のスペード針、すっと縦長になったローマンインデックスに外周のレイルウエイトラックとまさに19世紀の懐中時計を彷彿とさせる。そしてその顔からは、上質なホワイトエナメルダイアルの質感と相まって歴史的な風格さえも伝わってくる。400万円台半ばと、確かにおいそれと手を出せるレベルの価格ではないが、その価値を十分に感じられるほどの仕上げと作りなのは確かである。
 
ヨハンの着用イメージ

文字盤のデザインもさることながら、サイドまで丸みを帯びたケースに仕上げられているため、懐中時計の雰囲気そのもの。まさに大人にこそ似合う、そんな上品で落ち着いた佇まいだ。ただ、ケース厚10.5mmなのだがケース径の43.5mmは、貧弱な僕の手首にはちょっと大きかった。僕のように細みの人は39.2mm径のフリードリッヒⅡ世かⅢ世のほうがサイズ的には合わせやすいかもしれない

 
ヨハンのムーヴメント

ラング&ハイネの魅力はやはりムーヴメント。4分の3プレート、軸受けのゴールド製の輪を青焼きビスで止めたゴールドシャトン、そしてスワンネック緩急針など19世紀の懐中時計と同じグラスヒュッテ様式を再現した、この美しいムーヴメントに魅了される時計愛好家が多いというのも納得である。4分の3プレートに施された「銀のしごき密着」と呼ばれる仕上げは、ラング&ハイネだけの仕様。この独特な質感が当時の懐中時計用ムーヴメントの雰囲気を強めているのだ

 
キャリバーⅠのスワンネック緩急針

スワンネック緩急針に繊細で美しいエングレーブが施されたテンプ受けと、まさに19世紀の高級懐中時計を彷彿とさせる作りだ。そして、特に注目したいのは、通常ルビーが採用されるアンクルの軸受け石に何とダイヤモンドを使用している点だ。これもかつての高級懐中時計に見られた古典的なものだが、ラング&ハイネでは現代の技術も取り入れて美しいカッティングを施し、芸術性をさらに高めているというからすごい

 
(写真◎笠井 修)
 

INFORMATION


ブランド名 LANG & HEYNE/ラング&ハイネ
モデル名 ヨハン
ケース素材 K18ホワイトゴールド
ベルト素材 レザー
サイズ 43.5㎜
防水性 日常生活防水
ムーヴメント 手巻き(キャリバーⅠ)
税込み価格 448万2000円
問い合わせ ノーブルスタイリング
TEL.03-6277-1600
http://noblestyling.com/brand/lh/
ヨハンの正面

 

 

菊地 吉正

菊地 吉正 – KIKUCHI Yoshimasa

 
時計専門誌「パワーウオッチ」を筆頭に「ロービート」、「タイムギア」、近年では女性向けウオッチマガジン「ワッタイム」と、時計関連の雑誌を次々に生み出す。また、アンティークウオッチのテイストを再現した自身の時計ブランド「OUTLINE(アウトライン)」のプロデューサーとしてオリジナル時計の企画・監修も手がける。GERMAN WATCH.jp編集長。

2018.12.25 UPDATE