世界トップレベルと称賛されるグラスヒュッテ・オリジナルの文字盤製造技術
GLASHÜTTE ORIGINAL
グラスヒュッテ・オリジナル
世界トップレベルと称賛される
グラスヒュッテ・オリジナルの文字盤製造技術
第2次世界大戦後、ドイツのグラスヒュッテに誕生した“グラスヒュッテ国営時計会社”(通称GUB)を前身とする高級時計メーカー、グラスヒュッテ・オリジナル。
SeaQ(シーキュー)やパノマティックルナといった数々の魅力的なモデルを生み出している同社の時計作りにおいて、とりわけ大きな強みとなっているのが、文字盤製造工房を自社で保有している点だ。
文字盤はまさに時計の顔とも言える重要なパーツだが、意外にもほとんどの時計メーカーは外部のサプライヤーから供給を受けている。自社で文字盤まで手がけているのは実はほんのひと握りで、グラスヒュッテ・オリジナルはそのひとつ。しかも、その品質はトップレベルだ。
そこで、今回は“世界トップレベル”と称賛される同社の文字盤作りにおけるこだわりを、印象的なカラー文字盤を多く展開する“ヴィンテージ”コレクションを例に紹介していきたい。
美しい文字盤作りには、丁寧な下地処理が重要
良い文字盤とは一般的にどういったものか。
ドレスウオッチなのかスポーツウオッチなのかといった時計の種類などでも重視すべきポイントは異なるため一概には言えないが、一般に高級時計においては、優れた視認性を確保しつつ高級感ある仕上がりとなっていることが良い文字盤の条件と言っていいだろう。
例えば、立体的なインデックスを与えるというのもその方法のひとつだが、より美しさと高級感を追求するのであれば文字盤の質感を高めることが効果的だ。
そしてこの質感を高める手法には大きく二つある。
ひとつは塗装などによって質感を高める手法、もうひとつは可能な限り塗装を少なくし、下地のニュアンスを見せていくという古典的な手法である。
このうちグラスヒュッテ・オリジナルで特に定評があるのが、後者の手法による文字盤作りだ。
この手法においてとりわけ重要になるのが“下地処理”の工程である。
同社ではインデックスなどをはめ込むブランクをつけた状態の文字盤を、ダイヤモンドパウダーを溶かした水溶液のなかに置き、その上に3kgの重りを乗せて、ゆっくりと研磨する。入念な下地処理を行ったうえで施される同社のサンバースト(筋目)は、放射に歪みもない繊細かつ密な仕上がりだ。
この後、工程はガルバニック(メッキ)加工に移る。このガルバニック加工は、気温や湿度によって色が大きく変わってしまうため、同社ではその対策として作業ルーム全体の気温と湿度を常時一定に保てるよう空調管理を徹底。厳格なコントロールを行うことによって、色を出すことが難しいとされるブルーやグレーといった文字盤のラインナップを増やすことが可能になった。
そして、その後、保護用のクリアラッカーの吹き付け、ロゴなどのプリント、インデックスの取り付けなどを経て、完成にいたる。もちろん要所となる工程では、入念なチェックも行われ、高い品質を維持している。
ここでは特に重要な工程だけをピックアップしたが、実際には1枚の文字盤を作るのに最低でも90〜100の工程を要するというから、相当な手間と時間がかけられている。
近年ではさらに高度な技術を要するグラデーション文字盤なども展開。唯一無二とも言える独特な文字盤表現で多くの注目を集めている。
文◎堀内大輔(編集部)/写真◎神戸シュン(工房撮影)
2020.03.26 UPDATE