生粋のドイツ時計 モリッツ・グロスマン物語 第3回 「手作業で行われる時計製造の拠点」
MORITZ GROSSMANN
モリッツ・グロスマン
生粋のドイツ時計 モリッツ・グロスマン物語
第3回
「手作業で行われる
時計製造の拠点」
今回から数回にわたって、モリッツ・グロスマンの素晴らしい時計が生み出される、手作りの製造現場を見ていきたい。
現在の社屋ができたのは創業から5年後の2013年。ノモス社の本社としても知られるグラスヒュッテ駅から線路を挟んでちょうど真向かいに位置する5階建てのモダンな建物である(上写真)。筆者が最初に取材で訪れたのはちょうどその新社屋ができた2013年。しかもまだ日本での展開が始まる前だった。まず最初に通されたのが、最上階に設けられた円形のショールーム兼商談スペース(写真❶)。なんとそこからは、ノモスはもちろん、A.ランゲ&ゾーネ、グラスヒュッテ・オリジナルなどの建物やグラスヒュッテの街並みが一望できる。まさに最高の場所だった。ちなみに、そのときに撮ったのが写真❷だ。当連載の第2回でも紹介したが、そこに掲載した以前の工房と見比べると、その躍進のほどがうかがえるだろう。
さて、開発から製造までを一括して手がけるモリッツ・グロスマンだが、ここではケースや文字盤などの外装パーツを除いた、ムーヴメントの85〜90%が製造されている。ただ、同様のマニュファクチュールメーカー(ムーヴメントを自社製造するメーカー)との大きな違いは、針まで自社で製造している点だ。ムーヴメントを自社製造しても針まで自製する時計メーカーは極めて少ない。その意味ではとても稀な存在といえるだろう。現在のスタッフ数は約50名。そして年生産数は400〜500本とかなり少ない。ただ、今後も手作りを貫いていくため、たとえ生産量を増やしたとしても1000本が限界だという。
では、具体的にどのような工程を経てムーヴメントが作られていくのか。ここでは簡単にその流れを紹介する。そしてこれらの工程については次回以降、さらに詳しく見ていくことにしたい。(文◎菊地吉正)
ムーヴメント完成までの主な工程
2018.07.09 UPDATE