独立時計師“マルコ・ラング” のウオッチメイキング⑤
LANG & HEYNE
ラング&ハイネ
古典美と呼ぶにふさわしい
愛好家を魅了するキャリバーたち(第2回)
今回は、2009年に発表された小径機、キャリバーⅤとそれをベースにシンプルなスモセコ3針に機能を絞って2011年発表されたキャリバーⅥを取り上げる。
【キャリバーⅤ】
新設計となったキャリバーⅤは、3mm強小径化され、さらに4分の3プレートで覆われていたこれまでのムーヴメントとは違い、3角形のほっそりとした輪列ブリッジを新たに採用したことで、奥の歯車類まで見ることができる仕様になっている。しかもその歯車は5本スポークから6本スポークに強化することでさらに細く作られ、全体の美観もさらに高まった印象を受ける。
そして最大の特徴は、トルクを一定に保つコンスタントフォース機構が搭載されている点だ。ガンギ車の上に装備されたルモントワール式定力装置によって、主ゼンマイの巻上げ状況いかんによって伝わる力(トルク)に強弱が生まれるのを防ぎ、最後までトルクを一定に保つことで、歩度が飛躍的に改善している。また、この機構により秒針は1秒ごとにステップ運針するというのも大きな特徴と言えるだろう。
キャリバーⅤ搭載モデル
2009年にリリースされたコンラートと2010年のハインリッヒの2種類のラインが存在する。特徴的なのはセンターサークル内に設けられたポインターデイト。よく見ると1日と31日との間隔が空いているのがわかるだろう。つまり31日から1日への日付けの切り替わりは、指針がラング&ハイネのロゴをジャンプして1日に移動するという何ともユニークな機構を採用している。一方のハインリッヒは、ロゴがあった場所にパワーリザーブインジケーターが追加され、より実用性が向上した。
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【キャリバーⅥ】
キャリバーVをベースにシンプルなスモセコ3針仕様に変更したのがキャリバーⅥである。Vと同じ3角形の輪列ブリッジが採用されたことで、プレートに隠れてしまう2番車、3番車、4番車、そしてガンギ車と輪列の仕組みと動きが立体的に楽しめるというのはこの作りの特徴であり大きな魅力と言えるだろう。ちなみにキャリバーⅤに装備されているルモントワール機構の設定はない。しかしながら、シンプルな設計によってパワーリザーブは約55時間に延長されたため、ユーザビリティは高まっている。
キャリバーⅥ搭載モデル
搭載モデルは2011年に発表されたフリードリッヒ2世とフリードリッヒ3世だ。2世は、ホワイトコーティングしたスリーピース構造の文字盤に中央に向けて配置されたアールデコ調のアラビア数字が特徴的だ。一方のフリードリッヒⅢ世は、細長のローマンインデックスのミニマルなデザイン。文字盤にはシルバー無垢を採用。明るいつや消しとガルバニックブラックの2種類が用意されている。両ラインともに39.2mmと小振りで日本人にはちょうど良いサイズ。コレクションで唯一ステンレススチールケースがラインナップしている点も見逃せない。
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(文◎菊地吉正)
2019.03.06 UPDATE