19世紀のグロスマン製懐中時計を再現した最新作
MORITZ GROSSMANN
モリッツ・グロスマン
19世紀の伝説的な懐中時計に倣い
縫い針の様に極端に細い分針を見事に再現
今年から新作の発表を、インターナショナルロードショーとして、ドバイ、東京、香港、ロンドンの主要な4都市で、それぞれに違う新作モデルを披露するという新しいスタイルとなったドイツの高級時計ブランド、モリッツ・グロスマン。そのファイナルイベントがロンドンで去る7月11日に開催され、パワーリザーブ・ヴィンテージ、ベヌー37ブラック、そしてムーン・イン・スペースの三つの新作が発表された。
パワーリザーブ・ヴィンテージ
そのひとつ“パワーリザーブ・ヴィンテージ”は、ブランド名にもなっている19世紀の伝説的な時計師、モリッツ・グロスマンが作った当時の懐中時計の雰囲気を忠実に再現しているのが特徴である。そして、下の写真が当時の実際の懐中時計だ。
当時と同じシルバー文字盤に縦長のローマンインデックス。そして、12時位置のロゴまで当時のものが採用された。そして圧巻なのが針の造形だ。
洋ナシ型の先端が美しい時針と、縫い針の様に極端に細い分針を見事に再現。しかも分針の最も細い部分は 0.1 mm。さらに先端部分がわずか 0.05mmという細さを実現している。まさに手作りだからこそ成せる技なのである。
また、針は1本ずつ炎の上で焼き戻しされ、グロスマンを象徴するブラウンバイオレットではなく、12時位置に装備されたパワーリザーブインジケーターの色に合わせて、ブルーで仕上げられている点も既存モデルとの大きな違いだ。
さて、搭載された手巻きムーヴメントは、パワーリザーブ表示機構を備えたCal.100.2。このムーヴメントの最大の特徴は、プッシャー付きグロスマン製巻き上げ機構である。
高級時計は一般的に、時刻調整の際にリューズを引き出すとそれと同時に秒針も停止する。しかし、この機構の場合は、リーズを引き出すと同時に秒針が停止するのは同じだが、同時にムーヴメントは巻き上げモードから時刻調整モードに切り替わり、その後、手で押し込まなくともリューズは自然と元の位置に戻ってしまうという、他にないちょっとしたギミックを備える。
そして、時刻調整自体はそのままのリューズポジションで行えるが、調整後は4時位置のボタンを押す必要がある。つまり、その操作で時刻調整モードから再び通常の巻き上げモードに切り替わり、秒針も動き出して時刻を刻み始めるというわけだ。
これはリューズを引き出して針を合わせている間にケースに埃が入るのと、リューズを押し込む際に針の位置が変わってしまうのを防ぐために考案されたグロスマン独自の機構だ。
ラインナップは18金ローズゴールドと18金ホワイトゴールドの2種類。価格は共に税抜き440万円である。発売は10月を予定している。
ベヌー37ブラック
ベヌー37は、もともと日本からの提案で2018年にリリースされたケース径37mmという小振りなコレクション。つまり、細身の日本人にピッタリなサイズなのである。しかし、評判が良かったためにグローバル展開されたというものだ。
今回発表されたベヌー37ブラックは、その名のとおり同コレクション初のブラック文字盤仕様。しかも、18金ホワイトゴールドケースにアラビアインデックスを採用したモデルだけにカラーバリエーションとして加えられた。
グロスマンのアイコンでもある手作りの美しいロザンジュ針は、ブラウンバイオレットではなく、ブラックポリッシュ仕上げによって美しい鏡面に徹底して磨き上げられ、漆黒の文字盤と相まって精悍な印象をより際立たせている。古典的な味わいの既存のホワイト文字盤とはまったく違い、モダンで洗練された印象を受ける。搭載されているのは手巻きムーヴメントのCal.102.1。価格は税抜きで320万円。現在発売中(納期3カ月)。
ムーン・イン・スペース
これまで紹介してきた二つのモデルはレギュラーラインとして展開されるがここに取り上げる3本目の新作は、なんと世界限定8本というユニークピースである。
その名が示すように、宇宙で見た月をイメージして作られている。ユニークなのはその演出。右寄りオフセンターに配置された文字盤の左側は大胆なオープンワークで、宇宙に浮かぶ月を想起させる。そして、月の表面を思わせるレリーフが手作業で刻まれるという手の込んだ作りだ。
そして、さらに時分針を備えた白いインダイアルは、かなりの小スペースにもかかわらずグラン・フー・エナメルが施されているというから驚かされる。価格は486万円。
文◎菊地吉正
2019.08.02 UPDATE