顔はシンプルでも中身はスゴいんです!“ハマティック” 独創性に富む自動巻き機構の魅力に迫る(後編)
MORITZ GROSSMANN
モリッツ・グロスマン
顔はシンプルでも中身はスゴいんです!
“ハマティック” 独創性に富む自動巻き機構の魅力に迫る(後編)
ドイツ・グラスヒュッテに本拠を構える高級時計ブランド「モリッツ・グロスマン」。その最新作である“ハマティック”について、前回は、搭載する革新的な自動巻きムーヴメント、Cal.106.0のメカニズムについてフォーカスしたが、今回は、外装面や仕上げなど時計としての魅力に注目してみたい。
このハマティックだが、外装面で既存コレクションとの決定的な違いは針の造形だ。これはブランド名にもなっている伝説的な時計師、モリッツ・グロスマンが19世紀に作った当時の懐中時計の雰囲気を忠実に再現したものだという。そして、下の写真が実際の懐中時計である。
洋ナシ型の先端が美しい時針と、縫い針の様に極端に細い分針を見事に再現。しかも分針の最も細い部分は 0.1 mm。さらに秒針は先端部分がわずか 0.05mmという細さを実現している。まさに神技とも言える数値だ。そのため針専門の職人が手作りで1日1本仕上げるのがやっとと言う。もちろん、最後には針1本ずつ炎の上で焼き戻しされ、グロスマンを象徴するブラウンバイオレットカラーに仕上げられている。
今回、グロスマンとしては珍しい白いオパリン文字盤が採用された。そのためこの極細の針といえどブラウンバイオレットの色みはちゃんと感じる。この白文字盤は19世紀のオリジナルに倣ったというが、その辺りも織り込んでのことなのかもしれない。
続いて今回開発された自動巻きムーヴメント、Cal.106.0に目を向けてみよう。メカニズムの革新性もさることながら仕上げの美しさもグロスマンならではの大きな魅力だとあらためて感じさせるほど素晴らしい。
手巻き式とはだいぶ構造が違うが、19世紀当時に倣い支柱構造を採用した洋銀製の地板には、しっかりと幅広のリブ模様、そして、そこにはブラウンバイオレットに焼き戻しされたビスによって、18金ゴールド製のシャトン(穴石を留めるリングこと)が留められていることが見て取れる。
しかもテンプ受けには極めて繊細なハンドエングレービングが施されるなど、19世紀の懐中時計に見られるグラスヒュッテ様式がふんだんに盛り込まれた仕上げは見た目にも実に美しい。ましてや振り子型ローターの独創的造形と相まって、見ていてまったく飽きない。
このように仕上げは細部にわたって古典的な雰囲気にこだわりながらも、そのメカニズムは最新という、古典と革新がともに味わえるハマティック。価格は605万円とやはりおいそれと手を出せるものではないが、それだけの金額を出しても満足できるほど魅力的な部分が多いことは確かである。
そして、実際に実機も着けさせていただいた。41mm径なので筆者の貧弱な手首には若干大きかったが、繊細かつシンプルなデザインなので、このぐらいのサイズ感の方が着けたときの存在感もあってちょうどいいと感じた。そして何と言ってもこの極細の針はやはり目を引く。革新的なムーヴメントとともに「語りどころ」になることは間違いないだろう。
文◎菊地吉正(編集部)/写真◎笠井修(ムーヴメント写真を除く)
2019.11.14 UPDATE