独立時計師“マルコ・ラング” のウオッチメイキング④
LANG & HEYNE
ラング&ハイネ
古典美と呼ぶにふさわしい
愛好家を魅了するキャリバーたち(第1回)
ラング&ハイネのムーヴメントの特徴について紹介した前回に引き続き、今回から3回にわたって、全8種類あるムーヴメントと、それを搭載するコレクションについて一つひとつその特徴を詳しく見ていくことにしたい。今回はキャリバーⅢとキャリバーⅣの2種。ただし、最初に開発されたキャリバーⅠについては、前回すでに紹介しているのでそちらを見ていただくとして、今回は割愛させていただく。
【キャリバーⅢ】
キャリバーⅠをベースに2005年に開発された、フルカレンダー機構を搭載するラング&ハイネ初となる多機能ムーヴメント。最大の特徴は、分と秒を刻む歯車(2番車と4番車)の距離を9㎜縮めることでカレンダー表示のすべての機構を文字盤側の1.5㎜厚のモジュール(写真❶)に集約。それによって厚みが出るのを抑えることに成功している点だ。それに伴い時計自体も12.5mm厚に仕上がっている。また、このムーヴメントでは巻き上げ機構も新しく設計されており、3段階のリューズポジションでデイト、月、太陽の入射角が素早く設定できるように改良されているなど、キャリバーⅠがベースといえどもかなりのモディフアイが施されている。
キャリバーⅢ搭載モデル
モリッツ
3時位置でデイト表示と小窓に曜日表示、9時位置に月表示、そして6時位置に月齢表示と、まさに19世紀の懐中時計をそのまま腕時計にしたかのような古典的な意匠に引かれる。地球を表現した特徴的な12時位置のインジケーターは、季節に応じて異なる傾きを示す太陽の入射角が確認できるというデクリネーション表示。モリッツはこれを装備した世界初のコンプリケーションモデルでもある。6時位置にスモールセコンド(ムーンフェイズ表示)、文字盤中央部にデイ&ナイト表示も備えるなど実に多くの機能を搭載している。
【キャリバーⅣ】
2006年に開発したラング&ハイネ初の手巻きクロノグラフムーヴメント。しかも単なるクロノグラフではなく、クロノグラフ針と同じく60分積算針を中央の同軸上に配置した同軸積算クロノグラフムーヴメントとして仕上げている点はさすが19世紀の懐中時計に主眼を置くラング&ハイネらしいこだわりが見て取れる。しかも、クロノグラフ機構を制御する7柱のコラムホイールやバネ、レバー類は複雑な造形を成していることからも、かなり手の込んだ作りなのがわかる。しかも、それらのパーツが絡み合うことで、ほかのクロノグラフムーヴメントにはない独特の美しさを放つなど、目でも楽しめる芸術性をもしっかりと兼ね備えているところがすごい。
キャリバーⅣ搭載モデル
アルベルト
60分積算計をインダイアルではなくクロノグラフ針と同軸上にセットしたことにより、一瞬通常の3針モデルかと思ってしまうほどクロノグラフらしからぬ古典的でとても優美なスタイルを実現。リューズ内蔵型のワンプッシャー式で二つのプッシュボタンを廃したことも大きい。ちなみにクロノグラフはひとつのプッシャーによる3段階ファンクション操作(スタート・ストップ・リセット)式となる。
(文◎菊地吉正)
2019.01.25 UPDATE