北斗七星の輪列に象徴される、ヴェンペ初の自社ムーヴメント搭載モデルが売切れ次第終了に!
WEMPE
ヴェンペ
北斗七星の輪列に象徴される、
ヴェンペ初の自社ムーヴメント搭載モデルが
売切れ次第終了に!
130年以上もの歴史をもち、ドイツ国内のみならずヨーロッパやアメリカを中心に30以上もの店舗を展開する老舗の高級宝飾店“ヴェンペ(WEMPE)”。2006年からは本格的にオリジナルモデルを展開するなど高級時計メーカーとしての顔ももつ。そして今回取り上げるのは、そんな同社のハイグレードラインであり、記念すべき第1作目となったクロノメーター ヴェルケ トノーモデルだ。
実はこのモデル、すでに本国では生産終了となっている。そのため現在では日本での正規輸入代理店であり時計専門店も展開するシェルマンの各店舗にある在庫のみという代物なのである。
クロノメーターヴェルケ トノーモデルには、ブランド初の自社製手巻きムーヴメント、Cal.CW1を搭載している。そして、このムーヴメント最大の特徴は、何と言ってもラウンドではなくトノー型という点だ。
本来、自社でムーヴメントを最初に開発する場合は、開発コストの償却を考えて、汎用性があるラウンド型を製造するのが一般的だ。現に老舗の高級時計メーカーでさえ角型ムーヴメントを自社で開発しているところは少ない。しかし、それを最初に手がけてしまうあたり、ある意味ヴェンペのすごさとも言えるのかもしれない。
そして特筆すべきことがもうひとつある。それはケース裏側のシースルーバックからのぞくムーヴメントの写真を見るとわかるが、7個の受け石が何かの形になるように並んでいる。おわかりだろうか。それは北斗七星なのである。
ヴェンペは、建物も朽ち果てて廃墟と化していたかつてのグラスヒュッテ天文台を買い取り、同じ場所に再建。そのなかにこのクロノメーターヴェルケの工房を設けている。つまり、ムーヴメントを設計する際に北斗七星になるように輪列を組んで再現した背景にはこの天文台への思いがあったのだ。
汎用性のないトノー型を選んだり、北斗七星輪列にこだわったりと、ある意味では生産性を度外視した作りがなされている。それだけこのモデルには、長年時計ユーザーと直に接してきたからこその、ヴェンペなりのこだわりと思いが込められているとも言えるだろう。
このCal.CW1は、同じドイツ・グラスヒュッテの時計メーカーであるノモス社の技術協力を得て開発された。4分の3プレートやテンプ受けへのハンドエングレービングによる繊細な装飾、そして微調整が可能なスワンネック型緩急調整機構にビス留めのゴールドシャトン、そしてグラスヒュッテストライプと、グラスヒュッテの伝統的な技法を余すことなく取り入れられている。
さらに、ツインバレル構造を採用し80時間ものロングパワーリザーブというのも実用性という点で大きな魅力なのは言うまでもない。
そして、エレガントな曲線美を描くトノー型ケースもこの完成度の高いムーヴメントにあわせて作られたものだ。もちろん手首へのフィット感を重視した独自設計でもある。
価格はステンレスタイプで何と税抜きで60万円台。つまり、この価格帯で、こうした手間暇をかけたつくりを続けていくこと自体、厳しくなってきたことが生産終了になった背景にあるようだ。ちなみに、現在買えるのは日本だけとのこと。
ラインナップは素材がステンレスと18金イエローゴールドの2型で、それぞれにデザインバリエーションが3種類ある。
(文◎菊地吉正)
2019.09.24 UPDATE