外装クオリティに見る、ヴェンペのこだわり
WEMPE
ヴェンペ
ZEITMEISTER
外装面にみられる品質へのこだわりとは
前回の記事では、ヴェンペのコレクションのひとつツァイトマイスターに搭載される、ムーヴメントの品質に対するこだわりについて、主に書かせていただいた。今回は同コレクションの外装面のクオリティについて触れてみたい。
まずは、ツァイトマイスターのどのコレクションでもいいので、ぜひ一度、実機を手に取ってみてもらいたい。ケースには歪みがなくポリッシュ面も平滑で加工精度の高さを実感できることだろう。そして、ベゼルとミドルケースの噛み合わせがとても厳密で隙間がないほどしっかりしているのがわかる。
ただ、ヴェンペのすごさはそれだけではない。実は後になってこのベゼルとミドルケースを分解する際に困らないよう、ミドルケース6時位置部分に“ヘラ”を差し込める小さな切り欠き(写真❶)が設けられているのだ。些細なことかもしれないが、このようなメンテナンスの利便性への配慮は、時計宝飾店として長い間、直接ユーザーと接してきたヴェンペらしさと言えるかもしれない。
そして、この切り欠きのように、見えないところであっても手を抜かないヴェンペらしさが感じられる点がもうひとつある。それは裏ブタ。この内側(写真❷の手前右のパーツ)にベルラージュの模様が入れられるのは、この価格帯ではかなり珍しいこと。加えて、グラスヒュッテ天文台のレリーフとブランド名が刻まれている裏ブタの表部分にも同様のことが言える。裏ブタの刻印はメーカーを問わず様々な時計でよく見受けられる装飾。しかし、特にこの価格帯の場合は、とかく薬品を使ったエッチングで行うケースが多い。しかし、ヴェンペの場合は、天文台のレリーフはプレス、ブランド名はしっかり彫り込んで作られている(写真❸)。これも価格以上の品質にこだわるヴェンペの魅力を伝えるポイントと言えるだろう。
このようにムーヴメントだけでなく、外装面にも徹底したこだわりを持って作られているツァイトマイスター。前回はビジネススタンダード系のコレクションを取り上げたため、今回はスポーツ系の2種類のコレクションを紹介したい。
ひとつはブレスレット仕様のみで展開されるスポーツライン。300m防水を有する本格的なダイバーズウオッチが3針タイプとGMTモデルの2タイプ、加えてベゼルにタキメータースケールを備えたクロノグラフがラインナップする。なかでもダイバーズモデルの回転ベゼルに採用されているセラミック素材はなんと日本製(写真❹)。品質へのこだわりはこんなところにもしっかりと生かされていた。そしてデザインだが、見ておわかりのように、スポーツモデルと言っても、無骨な印象はなくとてもスマートで洗練された印象を受ける。ジャケパンスタイルならビジネスシーンでも問題なく着けられる。日常使いにクラシカルな時計よりも適度にスポーティさがほしい人には、おすすめだろう。
そして、もうひとつのスポーツ系がこのアビエイターである。意外かもしれないが、実は第2次世界大戦時において、ドイツ軍向けの軍用時計を製造していたという歴史がヴェンペにある。当時、空軍パイロットが着用したナビゲーションウオッチ、通称Bウオッチ(B-Uhr:写真❺)は、軍から指定されたスペックシート(写真❻)に基づいて、A.ランゲ&ゾーネを筆頭に、ヴェンペ、ラコ、ストーヴァの国内4社。これにスイスで唯一IWCが加わり計5社が製造を委託されていた。このコレクションはまさにその当時の軍用時計をモチーフに現代的なエッセンスを取り入れて再現された。ケースサイズは38mm、42mm(クロノグラフ)、45mmの3サイズ。小振りなサイズもあるため細身の人でも安心して選べるラインナップなのはうれしい。
文◎菊地吉正/写真◎神戸シュン(現地取材・パーツ写真)
2018.07.13 UPDATE