1815“ウォルター・ランゲへのオマージュ”
A.LANGE & SÖHNE
A.ランゲ&ゾーネ
ウォルター・ランゲがイメージした
“完璧な時計”を体現
2018年5月、スイスのジュネーブで行われたフィリップス・オークション。
このオークションのハイライトとして世界中から注目を集めていたのが、A.ランゲ&ゾーネの1815“ウォルター・ランゲへのオマージュ”スティールエディションだ。
オークションの結果、落札価格は、85万2500スイスフラン(バイヤースプレミアム込み)、日本円に換算すると9000万円以上という高値が付いた。ちなみにこの落札価格は、これまでにオークションで競り落とされたA.ランゲ&ゾーネ腕時計の最高値だったという。
出品された時計は、2017年1月に永眠したA.ランゲ&ゾーネ復活の立役者、ウォルター・ランゲへのオマージュとして、特別に1本限定で製作されたものである。なお生前、支援活動などにも積極的であったウォルターの意志を継ぎ、オークションでの収益金はスイスを拠点に世界各地の8カ国で、心身に障害を持つ青少年の支援活動を展開しているチルドレン・アクション財団に寄付される。
オークションを取り仕切ったオーレル・バックス氏は、これほどの高値が付けられた第1の理由を次のように語っている。
「1815“ウォルター・ランゲへのオマージュ”は、A.ランゲ&ゾーネが公式に発表した初めてのスチールモデルです。この時計は、コレクターにとっては夢の時計であり、困難な状況にある子供たちを援助することを目的に製作されました。この時計には永遠に、この類い希な誕生秘話が寄り添うことになります。フィリップスのスタッフ一同、この素晴らしいプロジェクトに係わることができたことを栄誉に思います」
スチール仕様は1本のみだが、これのホワイトゴールドモデル(限定145本)、ピンクゴールドモデル(限定90本)およびイエローゴールドモデル(限定27本)が2018年秋頃に限定で一般発売される。そこで、今回は改めて1815“ウォルター・ランゲへのオマージュ”の詳細を紹介しておこう。
ブルースチール針やアラビア数字インデックス、そしてレイルウエイといった伝統的な要素で構成されたデザインをコレクションの特長としており、今日ではトゥールビヨン、クロノグラフ、パーペチュアルカレンダーモデルといった複雑モデルまでがラインナップされている。
ランゲ1やツァイトヴェルクなどが、新生A.ランゲ&ゾーネの革新性を強く打ち出したコレクションならば、対して1815はランゲ一族に継承されてきた時計作りの伝統をいまに伝えたコレクションと言える。
ブランドを再興し、途絶えかけた一族の伝統を未来へと引き継いだウォルター・ランゲへのオマージュとして製作するのに、“1815”以上にふさわしいコレクションはないだろう。
さらに本作では、そのムーヴメントCal.L1924にもランゲの伝統的な要素が盛り込まれている。
それが、センター針によるステップ運針機構だ。
機械式時計は一般的に秒針が滑らかに運針するスイープ運針を採用するが、これをあえてクォーツのように1秒ごとに運針させたのが、このステップ運針である。さらに同機構にはもうひとつ、2時位置のボタンで操作するスタート・ストップ機能も盛り込まれた。つまり簡易のクロノグラフとして使用できるのである。秒単位で進むステップ運針と組み合わせることで、計時における判読はより正確性になるというわけだ。
この機構を、“伝統的”としたのは、実はウォルターの曾祖父であるフェルディナント・アドルフ・ランゲが1867年に発明し、祖父のエミール・ランゲが実用化した技術だからだ。さらに同社では1877年にこの技術を発展させ、“ステップ運針式秒単位ムーヴメント”として、特許も取得した。なお、これはドイツが初めて交付した特許のうちのひとつでもある。
ウォルター・ランゲがイメージしたであろう“完璧な時計”はどのような時計だろうと考え、出された答えが、シンプルな外観でありながらも技術的に興味深い複雑機構を搭載する、この1815“ウォルター・ランゲへのオマージュ”なのである。
2018.05.25 UPDATE