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A.ランゲ&ゾーネのアイコン、“ランゲ・アウトサイズデイト”が生まれた日に思いを馳せる。

 

A.LANGE & SÖHNE

A.ランゲ&ゾーネ


 
 フェルディナント・アドルフ・ランゲが、1845年にドレスデン郊外に時計工房を構えたことから、“A.LANGE&SÖHNE(A.ランゲ&ゾーネ)”の歴史が始まる。
 
 彼が製作した価値の高い懐中時計の数々により隆盛を極めた同社だが、第2次世界大戦の敗戦に伴い、ソビエト占領地区内にあった会社は国有化され消滅してしまう。
 
 しかし、1990年に東西ドイツが再統一を果たすと創業者の曾孫、ウォルター・ランゲはギュンター・ブリュームラインの協力を得てブランドを再興。初代ランゲが追求した“完璧な時計”作りを受け継ぎ、再び時計界を牽引する存在となっている。
 
 そんなA.ランゲ&ゾーネは、180年前の1841年4月12日、ドレスデンにあるゼンパー歌劇場の落成式にて実際に使用された“五分時計”に思いを馳せる。
 
 

ゼンパー歌劇場で披露された五分時計

 

背景の図版は1983年に作成された五分時計のイラストとランゲ1(図版提供、参考:クラウス・フェルナーとハリー・ユーリッツによるドレスデンのゼンパー歌劇場を再建する時に行われた五分時計復元のための分析資料(1980年)、ザクセン州立歌劇場所蔵の歴史資料)

 
 ブランドにはこの五分時計に深い思い入れがあり、それには二つの理由がある。そのひとつは、その生みの親であるヨハン・クリスチャン・フリートリッヒ・グートケスが、時計産業の先駆者であるフェルディナント・アドルフ・ランゲの師であり義父であったこと。
 
 そしてもうひとつは、この時計に着想を得て“ランゲ・アウトサイズデイト”が生まれたことだ。
 

ドレスデン劇場広場に建つゼンパー歌劇場

 
 ヨハン・クリスチャン・フリートリッヒ・グートケスは、新築された歌劇場のために、まだこの世に存在しないような時計を作ることになった。ザクセン王家がグートケスに「立派なクロノメーターを作るように」と命じたのだ。
 
 それは普通のダイアルと針を備えた時計とは一線を画し、“同種の時計のなかでも珍しい時計”でなければならなかった。
 
 この奇抜な申し出は、17世紀のフランスで作られた二つの枠に囲まれた数字ディスク、または数字ホイールで時刻を表示する時計に、ヒントを得たものと思われる。なお別の説では、同じくデジタル表示のミラノ・スカラ座の舞台時計がモデルだとされている。
 
 いずれにしても、ドレスデン王立歌劇場(ゼンパー歌劇場の前身である劇場の正式名称)の落成式で、時刻をはっきりと読み取れる舞台時計に聴衆は騒然となった。
 
 この時計は当時、ザクセン時計技法の傑作とされ、製作したグートケスは実際、ザクセン王国宮廷時計師に任命されている。
 
 

ランゲのアイコン、“ビッグデイト表示”の原型


客背から見た、舞台上方にある現在の五分時計

 
 グートケスは、五分時計に前例のない画期的な構造を採用した。それは、数字が印刷された布を張ったローラー2本を歯車で駆動し、そこに二つの窓を開けたフレームを取り付けたもの。
 
 左窓にはローマ数字のIからXIIで時が示され、右窓にはアラビア数字の5の倍数、つまり5から55で分が表示される。そして正時には右の分窓には何も表示されない。これが、後にA.ランゲ&ゾーネが採用するビッグデイト表示の原型となった。またランゲのビッグデイト表示においても、1日から9日までは左窓には何も表示されない。
 
 初代の五分時計には設計図も説明書も存在しないため、グートケスがこの数字ローラー式時計を製作した理由は想像する以外にない。演奏中に客席が暗くなっていても最後尾の席から時刻を読めるようにするため、というのが最も合理的な理由だ。
 
 直径約160センチの大型ローラーで、高さ約40センチの数字を回転させる。これと同じくらい読み取りやすい時刻表示を、アナログ時計で実現しようとしたら、舞台前部の上方に設けられたスペースには収まらなかったことだろう。
 
 グートケスは従業員と一緒にこの時計を設計・製作した。その従業員のひとりが、後に娘婿となり共同経営者となったフェルディナンド・アドルフ・ランゲだったのである。
 
 

五分時計の機能原理が再現された、縮尺10分の1で甦った傑作


 
 1869年、建築家ゴットフリート・ゼンパーが設計したドレスデン初の歌劇場が大火災で焼け落ち、有名な舞台時計も焼失してしまう。
 
 歌劇場を再建するにあたり、グートケスの弟子のひとりであるルートヴィッヒ・トイプナーに、新しい舞台時計の製作が命じられた。トイプナーは、焼失した五分時計のことを熟知していたからだ。
 
 その結果、伝統的な塔時計の要素と古典的な時計の構造原理を組み合わせた大きな時計が完成する。この時計は、トイプナーの工房と、現在もライプチヒに存在するツァッカリア塔時計工房によって、当時の最新の技術標準で製作された。
 
 ルートヴィッヒ・トイプナー、その娘婿のエルンスト・シュミット、そしてその息子フェリックス・シュミットが、三代にわたってこの2作目の五分時計の保守整備を担当し、その技術知識を20世紀に伝える。
 

ルートヴィッヒ・トイプナーの設計による1896年製の五分時計の置き時計タイプの模型。素材/木材、ガラス、ゴールドプレート仕上げの真鍮、ゴールド製歯車。高さ/31cm。この模型は現在、ドレスデンのツヴィンガー宮内にある数学・物理学サロンに展示されている(参考:数学・物理学サロン、ドレスデン美術館寄)

 
 
 写真の模型にも、二代目の五分時計の機能原理が再現されている。1896年、ルートヴィッヒ・トイプナーは見本市に出品するために、縮尺10分の1の模型を弟子のフーゴ・ライポルトとオットー・ヘアマンに作らせた。
 
 トイプナーの死後、その模型はヘアマンに寄贈され、そして彼は後に、その模型をもってハワイへ移住する。
 
 1951年、模型はトイプナーの孫であるフェリックス・シュミットの手にわたり、1980年にドレスデン数学・物理学サロンに寄贈された。
 
 

ランゲの技術革新につながった瞬間

 

現在の五分時計のムーヴメント

 
 東独時代に、第二次世界大戦で破壊されたゼンパー歌劇場を再建する際、五分時計も新しく製作されることになっていた。三代目となる舞台時計は、技師のクラウス・フェルナーとハリー・ユーリッツを中心とする専門家チームが製作した傑作である。
 
 設計図、および書類はすべて火災で焼失してしまったため、高齢になったフェリックス・シュミットの説明とトイプナーの見事な実用模型を頼るしかなかったのだ。
 
 大きな五分時計の復元は、文化遺産を保存するという目的にふさわしく、駆動技術を慎重に近代化しつつ6年以上の歳月をかけて行われた。
 
 戦争で破壊されてから40年を記念した1985年2月13日、長い年月を掛けて再建されたゼンパー歌劇場の落成式が盛大に執り行われた。それ以来、舞台上方で音もなく時を刻む五分時計は、世界中からやって来る聴衆を楽しませている。
 

(図版提供、参考:クラウス・フェルナーとハリー・ユーリッツによるドレスデンのゼンパー歌劇場を再建する時に行われた五分時計復元のための分析資料(1980年)、ザクセン州立歌劇場所蔵の歴史資料)

 
 その数年後、再統一されたドイツで、五分時計を讃える特別な出来事があった。それが、その独特の時刻表示から着想を得て生まれた、ランゲ1のビッグデイト表示である。
 
 フェルディナント・アドルフ・ランゲとヨハン・クリスチャン・フリートリッヒ・グートケスの曾孫、ウォルター・ランゲが1994年10月24日、ドレスデン王宮でランゲ1を発表すると観衆は息を呑んだ。
 
 その原型となった偉大な五分時計と同じように、この時計でも視認性を向上させたいという思いが技術革新につながったのである。ビッグデイト表示と、表示要素をオフセンターに配置したダイアルデザインが醸し出す趣により、ランゲ1は時計史に残るデザインアイコンとなっている。
 
 
出展:
ハリー・ユーリッツ『ドレスデン・ゼンパー歌劇場の五分時計(Die 5-Minuten-Uhr der Semperoper in Dresden)』(1986年)
雑誌『時計とジュエリー(Uhren und Schmuck)』23号
VEB Verlag Technik/DDR;ラインハルト・マイス『ザクセンの高級時計(Feine Uhren aus Sachsen)』Vol I, p.62, Callwey(2012年)
数学・物理学サロン 展示品レポート、五分時計について(Objektreport des Mathematisch Physikalischen Salons über Modell der Fünf-Minuten-Uhr.)
 
 

問い合わせ:A.ランゲ&ゾーネ TEL.0120-23-1845 www.alange-soehne.com/ja

 

2021.03.31 UPDATE

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