A.ランゲ&ゾーネの銀座ブティックが10周年
A.LANGE & SÖHNE
A.ランゲ&ゾーネ
最高レベルを提示する
徹底されたブランド哲学
1994年10月、センセーショナルな新作を発表し、ブランドを本格的に再始動させたA.ランゲ&ゾーネ。
独創的な機構と伝統的な手法が融合したそのウオッチメイキングは、瞬く間に世界中の愛好家を虜にし、いまや“ドイツ最高峰ブランド”としての確固たる地位を築き上げている。
当時、同社はとりわけ日本のマーケットを重要視していた。そのことは新作発表のわずか2年後の96年、東京・南青山に、ランゲ1をはじめとする代表作を取り扱う“ランゲ・アンド・ゾーネ南青山”をオープンし、日本進出を果たしていることからもうかがえるだろう。世界でも特に審美に厳しい目を持つと言われ、かつ、当時、認知度は決して高くなかった日本であえて展開した理由は、自社の製品が日本のユーザーに認められるという絶対的な自信があったからにほかならない。
結果はご存じのとおり。A.ランゲ&ゾーネは日本で着実にファンを増やし、それに伴ってショップの規模も拡大していった。
2008年には、ドイツのドレンスデン、中国の上海に次ぐ世界で3番目のブティックが高級時計ショップが建ち並ぶ銀座の並木通りにオープン。オープン日は東西ドイツが統一された10月3日である。さらに16年7月には同じく並木通りに店舗拡大とリニューアルを図った、現在の“A.ランゲ&ゾーネ銀座”をオープンさせている。
そして18年10月3日。この日はブティックオープンから10年という節目にあたる。“A.ランゲ&ゾーネ銀座”。そこは、ブランドの世界を体現する特別な空間だ。
“ディスカバリー”をコンセプトに構築された店内はコーポレートカラーであるシックなグレーで統一された壁面と柔らかな光に包まれる。アウトサイズデイトのヒントともなった“五分時計”のレプリカとともに、ムーヴメントの仕上げと同様に45°の角度に面取りをした、細部にまでこだわりが詰まった什器に鎮座する珠玉のタイムピースは必見である。
ラインナップひとつとっても驚きの“発見”ができるだろう。入り口付近からランゲ1、1815、サクソニア、リヒャルト・ランゲ、ツァイトヴェルクなどと、コレクションごとに並ぶ商品のラインナップが、非常に厚いのだ。なかには希少な限定モデルも目に付く。ランゲの時計は手作業も多いゆえ年間製造数が限られるが、そのなかでも銀座ブティックの品揃えは世界有数だろう。また新生A.ランゲ&ゾーネを象徴する機構であるアウトサイズデイトのディスプレイなども興味深い。各構成パーツを宙づりにして立体的に組み合わせているため、革新的機構の仕組みもよく理解できる。
さらに最奥のVIPルームへと繋がる通路壁面には創業者フェルディナント・アドルフ・ランゲ時代からのブランドの歩みが記されており、そこにもまた新たな発見が待ち構えている。なんと100年以上前の歴史的な懐中時計が展示されているのだ。これは当時の最高等級“1A”品質が与えられた貴重な個体で、本社から銀座ブティックへと特別に貸与されたものだ。現行製品と見比べてみれば、当時から変わらないモノ作りへの強いこだわりが再発見できる。
こうした商品構成や空間構成に加えて、訪れるたびに新たな発見や驚きを与えてくれるのが販売スタッフたちだ。スタッフは入社前からランゲの時計に魅了されていた、本国で知識と接客のトレーニングを積んだスペシャリストで、新作情報やメカニズムなどに精通する彼らと交わす時計談義を楽しみに来店するリピーターは非常に多い。また、ブティックマネージャーを務める佐藤氏は実際に購入しているオーナーでもある。そのため時計について知識が深いだけでなく、本当の意味でオーナー心理を理解しており、購入におけるアドバイスも適切だ。
「これまでに色々な時計を購入してきましたが、最終的に行き着いたのがランゲの時計です。なによりも作り込みの良さに魅了されました。また構造は緻密でありながら、ラグなど肉厚な作りで堅牢性が高く、ドイツプロダクトらしさを感じる優れた実用性にも引かれています。ほかのスタッフも私と同じように、ランゲの時計に魅了された者ばかりで、だからこそ、お客様の視点にも立ってご相談に乗らせていただいております」(ブティックマネージャー/佐藤氏)
また特注の茶器や茶碗を使った点茶が振舞われるサービスなど、銀座ブティックならではのサービスも特色である。さらに18年2月には銀座ブティックの10周年を記念した特別モデルを製作した。「日本らしさを意識した」というこの特別モデルは世界中から注目を集め、すぐに完売した。
高貴な雰囲気がただよいながらも気軽に足を運べる環境であるのも、スタッフの親しみやすい人柄やおもてなしの精神が徹底されているからだろう。
A.ランゲ&ゾーネではこうした直営ブティックを世界でわずか20店舗しか展開していない。“ドイツ最高峰”という圧倒的なブランド力を考えると、その数は意外なほど少ない。しかし、その理由は明快。時計作りへのこだわりと同じで、“すべてで最高レベルのホスピタリティーを提供する”という方針を採っているからにほかならないからだ。
(文◎堀内大輔)
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2018.10.03 UPDATE