ランゲ1と双璧をなす人気ファミリー“サクソニア”
A.LANGE & SÖHNE
A.ランゲ&ゾーネ
2019年、A.ランゲ&ゾーネはブランドを象徴するモデル“ランゲ1”が誕生した1994年から25年目という節目を迎えた。これを記念し、毎月、ランゲ1のアニバーサリーエディションが発表されるなど大きな注目を集めている。
この陰に隠れてあまり目立たないが、実は“サクソニア”もランゲ1と同じ94年発表。25年目を迎えたロングセラーなのである。そこで今回は、この“サクソニア”ファミリーにスポットを当て、魅力を再考していきたい。
“ムーヴメント”と出発点とする
サクソニアのコンセプト
“新たなる規範を確立するような時計”を目指して革新的な機構を搭載したランゲ1に対して、サクソニアでは、“常に機構を最優先すること”をコンセプトに掲げている。端的に言うと、サクソニアの場合、製作の出発点がムーヴメントだ。基本的な機能に絞り込んだモデルでも、複雑機構を搭載したモデルでも、技術的な最適解と優れた審美性を兼ね備えた機構を最も重視しているのである。そのため、“サクソニア”というモデル名も、昔からドイツ国内でも技術開発において先駆的な地方として知られているザクセン州に由来している。
今日“サクソニア”の基本形となるのが3針手巻きモデル(2015年より新文字盤デザインを採用)である。古典的な意匠を多用するA.ランゲ&ゾーネのコレクションのなかで、比較的コンテポラリーなエッセンスを多く取り入れた印象的な文字盤デザインが特徴のひとつと言えるだろう。
搭載するのは1994年に開発が開始された(ランゲ製ムーヴメントではキャリバーナンバーに開発着手年があてられることが多い)ロングセラーのCal.L941.1である。
決して新しいムーヴメントではないが、常に機構を最優先するサクソニア用のムーヴメントとあって、いまもって現役足り得る非凡な基礎体力を有する。ランゲの最高品質基準に準拠し、手作業による組立ておよび装飾はもちろん5姿勢調整が施される。さらにストップセコンド機能による正確な時刻合わせが可能だ。
また直径25.6㎜、厚さ3.2㎜という小径キャリバーでもあり、サクソニア(サイズは35㎜径、7.3㎜厚)に優れた装着感をもたらしている。この絶妙なサイズ感から、今日のサクソニアは男女兼用のユニセックスモデルとして展開されている。
この手巻きモデルを含めて、今日サクソニアファミリーは11のモデルで形成されている。そのなかから厳選して3モデルを紹介したい。
手巻きのサクソニアやフラッハなどシンプルなモデルであれば200万円アンダーで購入できること。そして汎用性の高いベーシックなデザインであることなどから、相対的に“A.ランゲ&ゾーネのエントリーモデル”というポジションに捉えられがちなサクソニアだが、その実、ムーヴメントや外装の作り込みを見れば、エントリー機などでは決してないことは一目瞭然である。
機構を最優先すると同時に優れた審美性を追求したサクソニアは、懐中時計時代から続くA.ランゲ&ゾーネの時計作りに対する姿勢を、最も忠実に体現したコレクションと言えるのではなかろうか。
(文◎堀内大輔/写真◎笠井 修)
2019.04.22 UPDATE