A.ランゲ&ゾーネの新時代を象徴するニューファミリー“オデュッセウス”【Vol.03】
A.LANGE & SÖHNE
A.ランゲ&ゾーネ
【Vol.03】
A.ランゲ&ゾーネではニューファミリーを立ち上げる際、デザインだけでなくムーヴメントも新たに開発することが慣例だ。
この“オデュッセウス”も然り。スポーティウオッチにふさわしい、アクティブなシーンにも対応する新ムーヴメントCal.L155.1 DATOMATICが生み出された。
ちなみにこの“DATOMATIC”(ダトマティック)とは、ドイツ語の“Datum”と“automatischer”を組み合わせた造語。つまり日付け機構と自動巻き機構に特徴をもったムーヴメントというわけである。
【Movement】
まずは日付け機構から見ていきたい。
A.ランゲ&ゾーネの象徴的な機構と言えば、初代ランゲ1から踏襲されるアウトサイズデイトである。
これは、1841年に創業者のフェルディナント・アドルフ・ランゲが師である宮廷時計師のグートケスと共同で開発したドレスデン・ゼンパー歌劇場の5分時計をモチーフにした大型のカレンダー機構だ。
Cal.L155.1 DATOMATICの新規性のひとつは、新たに曜日表示を付加した点にある。
最大で3枚のカレンダーディスクを動作させるのには強いトルクを要するが、デジタル表示を採用したツァイトヴェルクの技術が生きているのであろう。すべての表示が瞬時に切り替わる点も特筆だ。
また“調整のしやすさ”も本カレンダー機構において見逃せない点である。
オデュッセウスにおけるデザイン的な特徴ともなっている2時位置と4時位置の隆起している部分が調整ボタンにあたり、前者が日付け、後者で曜日の早送り調整が行える。
クロノグラフモデルではよくプッシャーの押し心地についても言及されるが、本作ではカチッカチッというコラムホイール式によく似た押し心地を実現している。一方でやや硬い感触を受けるのは誤作動を避けるためではなかろうか。
押し心地は良好で少しクセになりそうだが、押す際はしっかり奥まで押し込んでから手を離すようにしたい。また、歯車が噛み合っている22時〜1時付近は、カレンダー調整の禁止時間帯となるのでこれも覚えておきたい。
また自動巻きムーヴメント自体もアクティブなシーンに対応できるよう随所に手が加えられている。
そのひとつが“ハイビート化”だ。
従来のランゲムーヴメントでは一貫して毎時2万1600振動以下のロービートであったが、本機では外部からの振動や衝撃があっても安定した歩度を実現するため、毎時2万8800振動まで高められている。
加えて、テンプを支える受けを従来の片持ちから両持ちへと変更。これにより衝撃性をいっそう向上させている。また受けの変更に伴って、スワンネック緩急針の形状も変更されている。なお完全に巻き上げた状態でのパワーリザーブは約50時間だ。
一方、スポーティブ向けとは言え、ランゲムーヴメント最大の醍醐味である秀逸な仕上げは健在だ。
ペラルージュ仕上げを施した地板、伝統のグラスヒュッテストライプを施した受け、ローターの止めネジにまで採用されたブルースチールネジなど、極めて優れた美観をもつ。
高い実用性を備えつつも、伝統を継承するCal.L155.1 DATOMATICは、A.ランゲ&ゾーネの次代を担う主力ムーヴメントのひとつになっていくだろう。
次回に続く
INFORMATION
2019.12.17 UPDATE