A.ランゲ&ゾーネの新時代を象徴するニューファミリー“オデュッセウス” 【Vol.04】
A. LANGE & SÖHNE
A.ランゲ&ゾーネ
【Vol.04】
これまで3回にわたってA.ランゲ&ゾーネのニューファミリー“オデュッセウス”の実力を探ってきた。その最終回として、使用感など含めて実際に手にしてみた筆者の所感をお届けしたい。
【Review】
作りや仕上げについてはスポーティウオッチと言えど、そこはA.ランゲ&ゾーネの時計。非常に入念でドレスウオッチ並みの仕上がりである。ゴールドよりも硬いステンレススチールでありながら、同レベルの水準を維持している点はさすがだ。
これは耐衝撃性を向上させた新ムーヴメントCal.L155.1 DATOMATICにおいても同様である。伝統のグラスヒュッテ・ストライプやテンプ受けのエングレーブなど、トップブランドの職人の矜持が宿った秀逸な仕上がりと言えるだろう。
また真鍮(しんちゅう)製文字盤も実に凝っている。
ダークブルーカラーの文字盤は、アジュラージュと呼ばれる同心円状の装飾とザラつきを出して光沢を押さえた装飾を組み合わせている。実物は写真で見るよりも落ち着いた雰囲気となっており高級時計らしい威厳を感じさせる。
また夜光を塗布したインデックスや針も視認性を追求した力強いフォルムだが、多面カットを用いるなどで繊細さをプラス。伝統的なスタイルを生かしつつも見事にスポーティさを演出している。
このように文字盤の造形をひとつとっても、細部までよく考えられており、オデュッセウスが一朝一夕で作られたものではないことがよくわかる。
続いて着用感について言及していきたい。
存在感がある意匠のため、大きく見えるがケース径は40.5mmと標準的なサイズだ。ほかのランゲの時計がそうであるように、本作でも重心が低い位置にあるためフィット感も良く、筆者の手首にはしっくりと納まる。
実は他社製の代表的なラグジュアリースポーツモデルに比して、本作のほうが径は小さいくらいだ。
対して厚みは11.1mmある。一般的に言えば決して厚くはないが、本音を言えば10mmアンダーにまで厚みを抑えられると、装着感はなお良かっただろう。
また本作で採用された5連のブレスレットにも注目である。
ラグジュアリースポーツモデルで多いH型ではなく、あえて5連を選択したのは他社との差別化という理由ももちろんあったはずだ。実際、高級感とドイツブランドらしい質実剛健な雰囲気を併せ持つこの5連ブレスレットが、ギリシャ神話に登場する“オデュッセウス”のイメージとも非常によくマッチしており、本作の個性を際立ている。
さらにその造形も凝ったものだ。
バックルを装着したまま最大7mmの長さ調節ができるエクステンション機能を備えるほか、付属のピンを使って自身でコマを分解できるため、フィッティングが厳密に行えるという優れものなのである。
ブレスレットは重厚な作りだが、適度に遊びもあってフィット感が良い点も見逃せないだろう。
ステンレススチールモデルのオデュッセウスが300万円オーバーという価格を初めて聞いたとき、正直なところ筆者は高いようにも感じた。おそらく同じように感じている人は少なくないはずだ。
ただ、筆者は実物を手にしてその考えを改めさせられた。
優れた審美性はもとより実用への細やかな配慮など、価格に納得できるだけの完成度を備えていることは確かなのである。
百聞は一見に如かず。ぜひ直接その目でオデュッセウスの真価を見極めてもらいたい。
INFORMATION
2019.12.25 UPDATE