ランゲ・話題の最新作を実機でインプレッション
A.LANGE & SÖHNE
A.ランゲ&ゾーネ
特許技術を融合し進化した
トゥールビヨンの実力
7月上旬、A.ランゲ&ゾーネから新作、1815トゥールビヨンのエナメルダイヤル仕様が発表されたことを速報としてお伝えした。2325万2400円(税込み予価)という高額モデルながらも、発表直後から問い合わせが相次ぎ、予約完売の状態というから、その注目度の高さがうかがい知れるだろう。
さて、今回はこの1815トゥールビヨンについて深掘りしつつ、幸運なことに早速実機に触れる機会を得たため合わせてインプレッションをお届けする。
ご存じの人も多いかと思うが、まずはトゥールビヨンとはどういった機構なのか改めておさらいしたい。
簡単に説明すると、脱進機とテンプ一式など精度を司るパーツをキャリッジ(ケージとも)に収納し、それ自体を回転させることで重力の影響を分散させる、という機構だ。これによって重力による偏りが出にくくなり、理論上、精度は安定する。ただ極めて高度な技術を要するため、いまもの昔も製作できるのはごく一部のメーカーに限られている。
A.ランゲ&ゾーネは高い技術力を有した、そのごく一部のメーカーのひとつである。1994年の新生第1弾コレクションよりすでにトゥールビヨンモデルを展開しており、さらに長年の研究開発によって、2014年にはより理想的なトゥールビヨンモデルへと進化させた。
具体的には独自開発した二つの特許技術、ゼロリセット機構(2000年特許取得)とストップセコンド機構(2008年特許取得)をトゥールビヨンに連結させ、リューズを引くと同時に秒針が12時位置へと自動的に戻り、さらに停止する、というもの。これが初搭載されたのが、新作のベースともなっている1815トゥールビヨン(2014年発表)なのである。
現在、一般的な3針モデルでは当たり前のように装備されている秒針停止機能(通称ハック機能)だが、実はトゥールビヨンモデルでは、構造上この機能を備えることが極めて難しい。そのため、時報などのマスタータイムに同期させることも難しかったのである。いくら高精度とはいえ、マスタータイムとズレが生じてしまうのであれば、実用機能とは言いがたいだろう。
対して1815トゥールビヨンは、この秒針停止機能を与えたうえ、ゼロリセット機構まで同載し、正確な時刻合わせを可能にしたモデルなのである。ちなみにストップセコンド機構付きトゥールビヨンモデルはランゲ1・トゥールビヨン・パーペチュアルカレンダーやリヒャルト・ランゲ・トゥールビヨン“プール・ル・メリット”など様々あるが、ゼロリセット機構まで同載するモデルは、現在1815トゥールビヨンのみとなっており、コレクションのなかでも上位に位置付けられている。
さて優れた機能性もさることながら、新作で気になるのはエナメル文字盤の仕上がりだろう。
ずばり、結論から言うと、今回手にした実機を見る限り、エナメルのクオリティはかなり高い。クラックなどはないことはもちろん、一点の曇りすらもない。近年、エナメル文字盤のクオリティは全般的に向上していると言われるが、1815トゥールビヨンはなかでもトップクラスではなかろうか。純白の文字盤とブルースチール針のコントラストが、極めて上品で優雅な雰囲気を与えている。
またインデックスの仕上がりも繊細だ。インデックスやロゴは適度に盛られ、文字盤の表情に立体感を生み出しており、さらに赤で記された12時のインデックスに目を凝らすと、絶妙な濃淡が見られ手作業だからこその味わいを感じられる。
クオリティに機能、そして価格も、まさしく“ドイツ最高峰”の1本である。
(文◎堀内大輔/写真◎笠井 修)
INFORMATION
歴代の主要トゥールビヨンキャリバーとその搭載モデル
2018.08.03 UPDATE