第10回ウォルター・ランゲ・ウォッチメイキング・エクセレンス・アワード受賞作決定
A.LANGE & SÖHNE
A.ランゲ&ゾーネ
優れた時計師の育成を目的に、A.ランゲ&ゾーネが2010年より主催するコンテスト”ウォルター・ランゲ・ウォッチメイキング・エクセレンス・アワード”。
その第10回目のアワードで、東京のヒコ・みづのジュエリーカレッジに在籍する篠原那由他氏の作品が栄冠に輝いた。
日本の篠原那由他氏が製作した
レトログラード式表示機構に栄冠
今回の課題は、「自由に選べるレトログラード式表示の設計と製作」であった。
5カ国から参加した次代を担う時計師の卵たち8人は、いずれも在籍校からこのコンクールに推薦された精鋭である。2月にドレスデンに審査員4人が集まり、応募作品1点1点について講評。
審査員にはA.ランゲ&ゾーネの商品開発ディレクターを勤めるアントニー・デ・ハス氏、時計専門ジャーナリストのギスベルト・ブルーナー氏とペーター・ブラウン氏、そしてドレスデン数学・物理学サロン所長のペーター・プラースマイヤー氏が名を連ねる。
評価項目は、アイデアの独創性と斬新さ、機能性、技術と技工のクオリティ、そして見た目の美しさ。
今年は、特に最後に挙げた審査基準に大きなウエイトが置かれた。
応募作品のなかでも、東京のヒコ・みづのジュエリーカレッジに在籍する篠原那由他氏(25歳)の“スロームービング・レトログラード”と名付けられた作品は、上述の審査基準のすべてにおいて審査員を感心させた。
そのムーヴメントは、ダイアル側に時と分をそれぞれ独立させたレトログラード式表示を、そして裏側にスモールセコンドを搭載している。
篠原氏は、提供されたユニタス製キャリバー6498-1を根本的に作り直し、遠心調速機を利用して針を戻すように二つの輪列を組み込んでいる。これにより、メイン表示が最後の目盛りに達したらゆっくりと穏やかに始点に戻る。
完全に機能するだけでなく入念な仕上げ装飾も美しいこのムーヴメントは、篠原氏の創造力の豊かさが反映された機構、見事なデザイン、優れた製作技術で他の応募作品を圧倒した。
また、レベルの高さで審査員団をうならせた作品2点にも個別に賛辞が贈られた。
フィンランドのエスポー市にあるフィンランド・ウォッチメイキング・スクールに在籍するアッテ・ピルッティイェルヴィ氏(28歳)の作品は、ダブル・レトログラード式12時間表示に革新的な二針表示と蓄光顔料を塗布した目盛りが光るデイ・ナイト表示を組み合わせるという非凡なアイデアで高評価を得ている。
そしてオーストリアのカールシュタイン高等技術学校に通う弱冠17歳のルーカス・シュトラースベルガー氏は、本コンクール史上最年少の参加者だ。シュトラースベルガー氏の作品は、半円形のレトログラード式時分表示を一番良く目を引く12時位置に配置するという伝統的なアプローチで審査員たちの支持を集めた。
審査員たちは、優勝した作品と賞賛を得た2作品をはじめ、応募作品はいずれも世界の時計師の卵たち、しかもまだまだ若い生徒も、非常に意欲あふれる非凡かつ独創的なムーヴメントを製作できる能力を有していることを証明するものだったと感想を述べている。
2020.04.21 UPDATE