ドイツ時計散歩① ドレスデン
ドイツ時計散歩
ドレスデン
Dresden
ザクセン王国の首都である“ドレスデン”。芸術の香り高きかつての美しい町並みは、第2次世界大戦の空襲によって破壊されたものの、長い年月をかけてその建物の多くが再建された。そんなドレスデンの旧市街を取材に先立ってぶらりと散歩してみた。
ドイツ独特の様式美が生み出す
ネオバロック建築の妙
旧市街は、ドレスデン中央駅前からトラム(路面電車)に乗って約10分のところにある。“エルベの真珠”と称されるように、町の中心部を流れるエルベ川沿いには、バロック建築の大聖堂やドレスデン王宮が建ち並ぶ。なかでもエルベ川を境に旧市街と新市街を結ぶアウグストゥス橋からの景観はほんとうに美しい。
実は、訪れる少し前にドイツ北東部が豪雨に見舞われ、このエルベ川も各地で氾濫し約4万人に避難勧告が出されたというニュースが日本でも報じられた。そのため内心かなり心配していたのだが、すでに川も穏やかで、おまけに日射しまで出てくれたおかげで絶好の散歩日和。日本と違い湿度が低いためか、光のコントラストが強く、より町並みの美しさが際立って見えた。
さて、アウグストゥス橋から見ると正面に大聖堂、そしてその後ろにドレスデン王宮が建つ。その王宮と大聖堂の間を通るアウグストゥス通りに沿って建つ王宮の外壁には102mもの長さのタイル壁画(写真③)が続く。これは1876年に歴代君主を描いた“選帝侯たちの行進”で、それが経年によって風化してきたために、今度は2万5000枚のマイセン焼きのタイル画を使って同じ絵を1907年に再現したというものだ。第2次大戦時の2度にわたる激しい空爆によって城は焼け崩れたもののこの壁画だけは残ったというから驚かされる。この城壁のちょうど裏手側にあたるのが美しいアーチ形支柱が並ぶ回廊(写真②)と王宮の中庭。各支柱の上にはザクセン領諸家の紋章が飾られている。
壁画のあるアウグストゥス通りを先に進むと視界の広がる大きな広場が出現する。そして、そのほぼ中央にそびえ建つのがフラウエン教会(写真①)だ。おそらくご存じの方も多いのではないだろうか。この建物も空爆で跡形もなく瓦礫と化し2005年に再建されたものだが、その再建のされかたがほかの歴史的な建物とはちょっと違う。“世界最大のパズル”と形容されたように、それは破壊された建物の約30万個もの破片を可能な限り使って再建するというものだった。
再建の手法もさることながらそれにかかる膨大な費用の資金集めも実にユニークだった。なかには瓦礫の一部で小さな石をはめ込んだ寄付用の腕時計も公式に売られ、高額にもかかわらず多くのドレスデン市民が購入したという。総工費の1億3000万ユーロの8割近くが寄付によって賄えたため予定よりも1年早く完成した。まさに戦後復興のシンボル的存在なのである。
さて、ドレスデンで第1の観光名所といえばツヴィンガー宮殿。“ツヴィンガー”とは内濠と外濠の間の広場を指す言葉で、宮殿自体は1709年から約23年間かけて建造された。ドイツバロック建築の傑作と称される多数の彫刻で飾られた美しい建物が四方を囲む。現在は博物館として四つのテーマから構成されており、今回は時間があまりなかったため、時計を数多く展示している〝数学・物理サロン〟のみを見学。当時、恐らく最高の技術水準を誇ったであろう工具や学術的機器のコレクションは圧巻だった。貴重な時計のコレクションを中心とした展示フロアは時間の配分を失敗し、ゆっくり見られず若干消化不良。また必ず再訪しようと心に決めつつ宮殿を後にしたのだった。
2018.04.01 UPDATE
2008年に創業したモリッツ・グロスマン。ドイツ時計産業の聖地であるグラスヒュッテにおいて、最も新しい時計メーカーでありながら、いまやドイツを代表する高級時計メーカーのひとつとして確固たる存在感を示している。
SPECIAL 2018.04.17
ザクセン州の首都ドレスデンに工房を構える独立系ブランド、ラング&ハイネは、往時の宮廷時計の伝統を受け継ぐ時計作りを現代に貫き、徹底したハンドメイドにこだわっている。
SPECIAL 2018.04.07
ヴェンペはドイツにクロノメーター検定を復活させた立役者だった!
長らく歴史の途絶えていたドイツのクロノメーター検定を復活させたヴェンペ。その拠点となるのが同社が所有するグラスヒュッテ天文台である。
12月19日まで。14のドイツ時計ブランドが集うフェアが日本橋三越本店で開催!
日本国内で取り扱いのある14のドイツ時計メーカーが一堂に会する“ドイツ時計フェア2023”が日本橋三越本店 本館6階 ウォッチギャラリーで絶賛開催中だ。今年で5回目を迎えるフェアのテーマは“ドイツらしさ!”。
INFORMATION 2023.11.29
【ドイツ時計を深掘り】”ノモス グラスヒュッテ“から“クラブ キャンパスシリーズ”に流行のカラー文字盤モデルが登場!
ドイツの時計製造聖地であるグラスヒュッテに本拠地を置く時計メーカー“ノモス グラスヒュッテ”がエントリーモデルである“クラブ キャンパスシリーズ”に流行のカラー文字盤を取り入れた最新作を発表したため、その詳細をお伝えす […]
WHAT’S NEW 2022.06.14
【ドイツ時計を深掘り】A・ランゲ&ゾーネの最新直営店がオープン!
1845年、グラスヒュッテに時計産業を興したアドルフ・ランゲ。彼が興したA・ランゲ&ゾーネは、いまなおグラスヒュッテの市街地にあり、ドイツで最も優れた時計を作っている。しかしその歴史は必ずしも順風満帆とはいえな […]
INFORMATION 2022.03.29