ドイツ時計 実機でインプレッション【3回】
個性的なデザインもさることながら
新ムーヴメントにも注目
バウハウス的なデザイン哲学を取り入れ、ある意味で画一的スタイルを貫いてきたノモス・グラスヒュッテだが、近年は積極的に外部のデザイナーを起用するなどして、毎年、新しいエッセンスを取り入れた新モデルを発表している。そして、今回の新作もこれまでにないとてもユニークなものだ。
デザインを手がけたのは、ニューヨーク近代美術館やパリの国立現代美術館に作品が収蔵されるほど、世界的にも活躍するプロダクトデザイナー、ヴェルナー・アイスリンガー氏。
そして、その独特なデザインは、アウトバーンというネーミングやスピードメーターを彷彿とさせる文字盤など、ヴィンテージカーをイメージしている。
最初に見て最も印象的だったのは、サーキット場のバンク(コーナーのせり上がった部分)をイメージしたという、文字盤外周部がすり鉢状になっている点だろうか。時計の場合、ボンベ文字盤としてこの逆はよくあるが、すり鉢状はまずない。その意味ではなかなか斬新なスタイルと言えるだろう。極細の時分針、スペースを生かしたレイアウトなど、とてもミニマルで洗練されたデザインにも関わらず、そこには強い個性すら感じるから不思議だ。
さて、そんなデザイン力もさることながら、今回はムーヴメントも新しくなっている。2015年に開発した、厚さ3.2mmという、かなり薄型の自動巻きムーヴメント、Cal.DUW3001(このムーヴメントについての詳細は、本誌紙版「ドイツ腕時計No.3」の88ページに現地取材記事として掲載。よかったらそちらも参照ください)を、ベースにカレンダー機構を追加して新たに開発されたDUW6001である。
このムーヴメント、カレンダーディスクを外周部にセットすることで、厚さをわずかに4mm増に留め3.6mmに抑えている。確かにこの点も技術的にスゴイが、それ以上に筆者が注目したのは、そのカレンダー機構にクイックチェンジ機能がついた点だ。読者の皆さんは意外に思うかもしれないが、これまで同社が展開するデイト表示付きモデルは、日付けの調整を行う際、リューズで時針を10時と2時の間を往復させるという昔からの手法をとっていた。そのため、長期間使わなかったりすると、日付けを合わせるのに、何往復もさせなければならず、結構大変だったのである(実はかくいう筆者もそれを実感していた一人)。巻き上げ効率といい、精度といい、申し分のない素晴らしいムーヴメントなのだが、このクイックチェンジがないのだけは欠点だったと言わざるをえない。その意味では今回、性能だけでなく実用という面でもこれで完成域に達したといえるのではないだろうか。
しかも、今回はそれだけではなかった。独自開発の日送り機構によって、日付け操作禁止時間帯をなくすことにも成功。そのためクイックチェンジだけでなく24時間いつでも日付け調整が行えるようにもなっている。これも大きな魅力といえるだろう。
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