トーマス・ニンクリッツから日本限定スペシャルが登場
THOMAS NINCHRITZ
トーマス・ニンクリッツ
往年の名作を彷彿とさせる
ドイツ生まれの
日本限定スペシャル
時計づくりの家系に生まれ、歴史的なアンティークウオッチや置時計、柱時計の修復からパーツの製造まで行ってきた時計修復のエキスパート、トーマス・ニンクリッツ。往年の機械式時計本来の魅力とスタイルを貫き、徹底してハンドメイドにこだわる。そのため生産数は年間約100本ほどとかなり少ない。
そんな彼の代表作がムーヴメントの表裏を逆にセットし、ムーヴメントのプレートとテンプ周りを文字盤としてしまった実にユニークな“ヴァイスヴァーサ(上 の写真)”である。これについては以前に筆者が書いたレビュー記事を見ていただくとして、今回は日本限定として特別に製作された2種類の“グランドセコンド・スペシャルエデショション”を紹介したい。
このグランドセコンドの特別仕様、実はトーマス・ニンクリッツの日本総代理店を務めるシェルマンからの提案で実現したものだ。シェルマンと言えばアンティークファンならその名を知らない人はほとんどいないのではないだろうか。高級ブランドの現行品のほかに、1960年代以前のアンティークのメンズウオッチやレディースウオッチを数多く取り扱っている。そのため、このグランドセコンド・スペシャルエデショションもそんなアンティークウオッチを熟知したシェルマンらしいものに仕上がっている。
その第1弾は、既存のローマンインデックスに変えて特徴的なブレゲ数字を採用。もともとブレゲ針ということもあって、グッと古典的で魅力的な顔になった。さらには通常スタイルだったリューズも玉ねぎ型リューズに変更、アンティークな雰囲気にかなりこだわった作りにしている。
もう一方の第2弾は、1930年代の一時期だけに存在し、いまやアンティークウオッチ愛好家の間で高い人気を誇る文字盤デザイン“セクターダイアル”を再現。直線と曲線をうまく組み合わされた王道のデザインに、ブルースチールの繊細なバトン針のセレクトというところに往年の名作を意識した作りが感じられる。
さらに、ユニタスの手巻きムーヴメントCal.6498-1をベースにトーマス・ニンクリッツ自らが、クラスヒュッテ様式に改良し、同ブランドのトレードマークとなっているスワンネック緩急針にのみあえてブルーカラーを採用。同氏ならではの遊び心あふれるアクセントが加えられている点にも注目したい。
この日本限定仕様、ハンドメイドながら価格は40万円台とこのコストパフォーマンスの高さも大きな魅力となっている。ぜひ実機を実際に着けてみてほしい。単体で見るのとは違い、クラシカルな味わいながら、それなりの存在感もあってファッション的にもいい感じで決まるに違いない。
なお、トーマス・ニンクリッツは現在は引退し、グラスヒュッテの職業訓練校の講師であり、旧友でもあるウォッチメーカーのトーステン・ハーマン氏が、ニンクリッツの意志を引き継ぎ、2017年から従来のコレクションを発表している。
(文◎菊地吉正)
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